動画ID
so38587612 (1618546503)
動画タイトル
「灰になる」feat.vflower【残響レコードボカロ制作部】
投稿日時
2021年4月20日 20時00分00秒
長さ
0:04:16
投稿者
残響レコードボカロ制作部 (ID:ch2647804)シアーミュージック (ID:3179885)
動画説明
「小林優奈」さん歌唱版→https://nico.ms/so38609246「灰になる」 君の欠けらはちっぽけだ。 僕は納棺された彼を見送った。 納骨は家族だけで、と言われてしまい、僕は締め出されて葬儀場の外にいる。 あとほんの少しだけ早く見つかっていたら、助かっていたかもしれないと。そう聞いた。それほどに病気の進行状態は微妙で、手術も難しいものだと聞いた。 結果、開けてみたら中は大惨事。無事なものを見つけるほうが難しいくらいだったらしい。 彼は、僕の大好きな友人であり戦友であり好敵手であり――恋人だ。 結婚ができない二人を果たして恋人というくくりで結んでいいのかという問いかけは今でも老人たちの害ある論争としてあるけれど、僕と彼は、いつでも手をつないで笑い合う仲だった。 僕たちの結びつきを切り離したのは論争でも思想でもない。病魔だった。 家族だけで、と言われたとき、僕はあまりの悲しさに自分が崩れ落ちてしまうかと思った。 いつもそうだ。 入院の時も。 絶命の時も。 退院の時も。 納骨の時も。 僕はいつだって彼から引きはがされる。 絶命の瞬間に、立ち会えないことが一番、辛かった。彼の中の21gのことを、見送ることすらできないのだ。 雲ひとつない、五月晴れの空に煙が昇っていく。見上げると、陽光が僕の視界を遮った。 太陽でさえも僕のことを嘲笑い、彼との思い出を奪っていく。 桜を見れたら素敵なことだね、と話したのはもう一か月以上前のことなのか、と。絶望に似た感情を抱く。 最後に意識を持って話したのは、そのときじゃないだろうか。 彼は、言った。「俺を、海に還してほしい」 そう、言った。 この街は海が近い。切り立った山に囲まれ、少ない平地に人々が暮らし、そのすぐ東側は海の岸壁や砂浜が広がっている。そんな街だ。 海に辿り着くことに不自由はしない。 どうして、と問いかけた。僕は、ずっと彼を手元に置いておきたい。可能ならば、彼の遺骨を僕の棺に入れてほしいくらいだ、と考えていた。 けれど、彼は。「俺はもっと、いろんな場所を見たかったから。お前と、一緒に見たかったから。海や風になったら、叶うかもしれないだろ。だから」 にこりと笑った顔は細くやつれていたが、確かに彼のものだった。 だから、僕は決意した。 手に渡されたのは、小さなカプセル状の遺骨入れだ。本来であれば身に着けておくのを前提として作られているのか、酷く小さい。 ありがとうございます、と伝えたが、彼の親類である老婆は気味悪そうな顔をして去っていった。 僕にとっては、それくらいが好都合だ。 暑苦しいスーツを脱いで右肩にひっかけ、黒いネクタイをゆるめる。 このまま東にぶらりと歩けば、彼の望んだ海に着く。 嫌だな、と。素直に思った。なるだけゆっくり歩いた。 死人に口なし、と言うくらいなのだから、彼の言うことなど聞かずこのままこの遺骨入れを、肌身離さず持っていようかとも考えた。 でも、そんなことを、彼は望まないから。 よく、ここに釣りに来ていた。革靴と靴下を脱いで、スーツとともに置き去りにする。スラックスの裾を無理やりまくって、岸壁を降りる。テトラポッドをいくつか渡れば、海面にごくごく近い場所までたどり着ける。 僕は、そっと遺骨入れから『彼』を取り出した。 手に乗せて、香りを嗅ぐ。 君がよく着けていた香水の香りが、したような気がした。きっとそれは幻覚だろう。 ちょっと焦げた香りが、風に溶けていく。 手に乗せていた『彼』を、風と、波の間にさらりと落とした。 ああ、言わなくちゃならないな。 君に会いに行くのは、まだもう少し先だから。 だから、今は――――さよなら。原作 金森璋「灰になる」Produce 残響レコードボカロ制作部 https://twitter.com/zankyovocaloDirection みっどないと https://twitter.com/Midnight_DirLyric 金森璋 https://twitter.com/akillernovelsIllustration 前バ! https://twitter.com/maeba865​Movie ササオカ https://www.instagram.com/kakiko_kakikakiko/

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2021年4月23日 17:49 (最新)「小林優奈」さん歌唱版→https://nico.ms/so38609246「灰になる」 君の欠けらはちっぽけだ。 僕は納棺された彼を見送った。 納骨は家族だけで、と言われてしまい、僕は締め出されて葬儀場の外にいる。 あとほんの少しだけ早く見つかっていたら、助かっていたかもしれないと。そう聞いた。それほどに病気の進行状態は微妙で、手術も難しいものだと聞いた。 結果、開けてみたら中は大惨事。無事なものを見つけるほうが難しいくらいだったらしい。 彼は、僕の大好きな友人であり戦友であり好敵手であり――恋人だ。 結婚ができない二人を果たして恋人というくくりで結んでいいのかという問いかけは今でも老人たちの害ある論争としてあるけれど、僕と彼は、いつでも手をつないで笑い合う仲だった。 僕たちの結びつきを切り離したのは論争でも思想でもない。病魔だった。 家族だけで、と言われたとき、僕はあまりの悲しさに自分が崩れ落ちてしまうかと思った。 いつもそうだ。 入院の時も。 絶命の時も。 退院の時も。 納骨の時も。 僕はいつだって彼から引きはがされる。 絶命の瞬間に、立ち会えないことが一番、辛かった。彼の中の21gのことを、見送ることすらできないのだ。 雲ひとつない、五月晴れの空に煙が昇っていく。見上げると、陽光が僕の視界を遮った。 太陽でさえも僕のことを嘲笑い、彼との思い出を奪っていく。 桜を見れたら素敵なことだね、と話したのはもう一か月以上前のことなのか、と。絶望に似た感情を抱く。 最後に意識を持って話したのは、そのときじゃないだろうか。 彼は、言った。「俺を、海に還してほしい」 そう、言った。 この街は海が近い。切り立った山に囲まれ、少ない平地に人々が暮らし、そのすぐ東側は海の岸壁や砂浜が広がっている。そんな街だ。 海に辿り着くことに不自由はしない。 どうして、と問いかけた。僕は、ずっと彼を手元に置いておきたい。可能ならば、彼の遺骨を僕の棺に入れてほしいくらいだ、と考えていた。 けれど、彼は。「俺はもっと、いろんな場所を見たかったから。お前と、一緒に見たかったから。海や風になったら、叶うかもしれないだろ。だから」 にこりと笑った顔は細くやつれていたが、確かに彼のものだった。 だから、僕は決意した。 手に渡されたのは、小さなカプセル状の遺骨入れだ。本来であれば身に着けておくのを前提として作られているのか、酷く小さい。 ありがとうございます、と伝えたが、彼の親類である老婆は気味悪そうな顔をして去っていった。 僕にとっては、それくらいが好都合だ。 暑苦しいスーツを脱いで右肩にひっかけ、黒いネクタイをゆるめる。 このまま東にぶらりと歩けば、彼の望んだ海に着く。 嫌だな、と。素直に思った。なるだけゆっくり歩いた。 死人に口なし、と言うくらいなのだから、彼の言うことなど聞かずこのままこの遺骨入れを、肌身離さず持っていようかとも考えた。 でも、そんなことを、彼は望まないから。 よく、ここに釣りに来ていた。革靴と靴下を脱いで、スーツとともに置き去りにする。スラックスの裾を無理やりまくって、岸壁を降りる。テトラポッドをいくつか渡れば、海面にごくごく近い場所までたどり着ける。 僕は、そっと遺骨入れから『彼』を取り出した。 手に乗せて、香りを嗅ぐ。 君がよく着けていた香水の香りが、したような気がした。きっとそれは幻覚だろう。 ちょっと焦げた香りが、風に溶けていく。 手に乗せていた『彼』を、風と、波の間にさらりと落とした。 ああ、言わなくちゃならないな。 君に会いに行くのは、まだもう少し先だから。 だから、今は――――さよなら。原作 金森璋「灰になる」Produce 残響レコードボカロ制作部 https://twitter.com/zankyovocaloDirection みっどないと https://twitter.com/Midnight_DirLyric 金森璋 https://twitter.com/akillernovelsIllustration 前バ! https://twitter.com/maeba865​Movie ササオカ https://www.instagram.com/kakiko_kakikakiko/
2021年4月20日 20:00「小林優奈」さん歌唱版→https://nico.ms/so38609246「灰になる」 君の欠けらはちっぽけだ。 僕は納棺された彼を見送った。 納骨は家族だけで、と言われてしまい、僕は締め出されて葬儀場の外にいる。 あとほんの少しだけ早く見つかっていたら、助かっていたかもしれないと。そう聞いた。それほどに病気の進行状態は微妙で、手術も難しいものだと聞いた。 結果、開けてみたら中は大惨事。無事なものを見つけるほうが難しいくらいだったらしい。 彼は、僕の大好きな友人であり戦友であり好敵手であり――恋人だ。 結婚ができない二人を果たして恋人というくくりで結んでいいのかという問いかけは今でも老人たちの害ある論争としてあるけれど、僕と彼は、いつでも手をつないで笑い合う仲だった。 僕たちの結びつきを切り離したのは論争でも思想でもない。病魔だった。 家族だけで、と言われたとき、僕はあまりの悲しさに自分が崩れ落ちてしまうかと思った。 いつもそうだ。 入院の時も。 絶命の時も。 退院の時も。 納骨の時も。 僕はいつだって彼から引きはがされる。 絶命の瞬間に、立ち会えないことが一番、辛かった。彼の中の21gのことを、見送ることすらできないのだ。 雲ひとつない、五月晴れの空に煙が昇っていく。見上げると、陽光が僕の視界を遮った。 太陽でさえも僕のことを嘲笑い、彼との思い出を奪っていく。 桜を見れたら素敵なことだね、と話したのはもう一か月以上前のことなのか、と。絶望に似た感情を抱く。 最後に意識を持って話したのは、そのときじゃないだろうか。 彼は、言った。「俺を、海に還してほしい」 そう、言った。 この街は海が近い。切り立った山に囲まれ、少ない平地に人々が暮らし、そのすぐ東側は海の岸壁や砂浜が広がっている。そんな街だ。 海に辿り着くことに不自由はしない。 どうして、と問いかけた。僕は、ずっと彼を手元に置いておきたい。可能ならば、彼の遺骨を僕の棺に入れてほしいくらいだ、と考えていた。 けれど、彼は。「俺はもっと、いろんな場所を見たかったから。お前と、一緒に見たかったから。海や風になったら、叶うかもしれないだろ。だから」 にこりと笑った顔は細くやつれていたが、確かに彼のものだった。 だから、僕は決意した。 手に渡されたのは、小さなカプセル状の遺骨入れだ。本来であれば身に着けておくのを前提として作られているのか、酷く小さい。 ありがとうございます、と伝えたが、彼の親類である老婆は気味悪そうな顔をして去っていった。 僕にとっては、それくらいが好都合だ。 暑苦しいスーツを脱いで右肩にひっかけ、黒いネクタイをゆるめる。 このまま東にぶらりと歩けば、彼の望んだ海に着く。 嫌だな、と。素直に思った。なるだけゆっくり歩いた。 死人に口なし、と言うくらいなのだから、彼の言うことなど聞かずこのままこの遺骨入れを、肌身離さず持っていようかとも考えた。 でも、そんなことを、彼は望まないから。 よく、ここに釣りに来ていた。革靴と靴下を脱いで、スーツとともに置き去りにする。スラックスの裾を無理やりまくって、岸壁を降りる。テトラポッドをいくつか渡れば、海面にごくごく近い場所までたどり着ける。 僕は、そっと遺骨入れから『彼』を取り出した。 手に乗せて、香りを嗅ぐ。 君がよく着けていた香水の香りが、したような気がした。きっとそれは幻覚だろう。 ちょっと焦げた香りが、風に溶けていく。 手に乗せていた『彼』を、風と、波の間にさらりと落とした。 ああ、言わなくちゃならないな。 君に会いに行くのは、まだもう少し先だから。 だから、今は――――さよなら。原作 金森璋「灰になる」Produce 残響レコードボカロ制作部Direction みっどないと https://twitter.com/Midnight_DirLyric 金森璋 https://twitter.com/akillernovelsIllustration 前バ! https://twitter.com/maeba865​Movie ササオカ https://www.instagram.com/kakiko_kakikakiko/
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